こどもの意識が急になくなった―――

その時、あなたは愛する家族を救えますか?

 

救急隊員による相模原市自主研究グループ                            

      乳幼児心肺蘇生法普及活動ボランティア「クルス」

 

 読売新聞「ほうむたうん」編集室7.10 2001.vol.75

 


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 「クルス」は全国に先駆け、3年前に若手の市内消防士10名ほどで立ち上げた、乳幼児心肺蘇生普及ボランティアの自主研究グループ。現在、36名のメンバーが仕事の休みを利用してボランティアで市内の保育園などに出向き、救命講習の中で、乳幼児の心肺蘇生法を子ども達の一番身近にいる保育士や母親を対象に行っている。

 

 『クルス』の救命講習はとてもユニークだ。まず保育園などに出向き、応急処置の講習会の申し入れをする事から始まる。

 「事故の起こりうる現場での救命講習は、自分達の勉強のためにもなるので、是非協力して頂きたい」と、その趣旨を理解してもらうまで足を運ぶ。現在、活動3年目で、市内の保育園16ヶ所を既に回った。今年中にあと2ヶ所は回りたいそうだ。

 講習当日は職務外活動のためメンバー達は私服で集まる。その素顔に消防士という堅いイメージは全くない。子ども達の生活の場での講習は、保育士さんの目の高さになって救急活動を一緒に体験して進めてゆくことで、思わぬ問題点も見いだすことができる。さらに保育士さん達は、幼児の目線になって事故を考えてくれるので『クルス』のメンバーには、とても勉強になるという。このような講習での体験が救急時の仕事に反映されてゆく。「広めながら、学びたい」。これがこの自主研究グループの目的でもある。

 エプロン姿での寸劇では、「救急時こんなことは絶対やってはダメ」ということを笑いも交えてわざとやってみせる。視覚に訴えてよりいっそう認識と危機感を抱いてもらうための工夫だそうだが、寸劇での『慎吾ママ』のような格好が、演じるメンバー達への親近感を抱かせ、次に行う救命講習にもスムーズにつながるそうだ。

 「救命講習とはいえ、楽しくないとだめだと思うんですよ。仕事で疲れた保育士さん達に残ってもらってまで協力頂く訳ですから。一方的に難しいことを長時間話されてつまらなかったなんてことにならないよう、参加型で面白い講習にしいようとみんなで創意工夫しています」

 実際の救急時は気が動転してしまい、自分の家の住所もうまく説明できない人が多い。家族が目の前で倒れて冷静でいられるはずがないし、だからこそ講習を経験して一つでもよいから役立ててほしいそうだ。また、子どもでも応急手当は出来るという。母親が倒れたと小学4年生の子どもから119番通報があった。その行為がもう母親を助ける応急手当なのだ。

 「救急車で駆けつけると、家の前に立ち、小さな体で精一杯大きく手を振って待っているんですよ。お母さんを早く診て貰いたい一心なんです」

 人工呼吸のやり方も大切だが、いざという時、通報がきちんと出来る事も重要なのだ。

 地道な活動で、救命講習の必要性を訴え続けてきた『クルス』だが、問題がない訳ではない。あくまでも職務外なので時間や距離が限られてしまう。救命講習は一度では覚えられないので、何度も講習を受けてほしいという。自分達の講習を受けて必要性を感じてもらえたら、次は消防署に救命講習の依頼をしてほしい。そうすれば職務として、何度でも訪問することが可能になる。

 エプロン姿や手弁当で活動する消防士の自主研修グループ『クルス』は、市民との親密な交流を通しての『救命』の必要性を訴え続けている。

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クルスの講習会の流れ

 クルスの講習会は、自分達の自主研究の勉強のためでもあり、乳幼児に一番接する機会の多い保育士さんに少しでも救命講習を学んでもらいたいとの趣旨で行われる。その説明や園との打ち合わせのために何度となく園に足を運び、理解をしてもらうそうだ。

【その1】

スライドを見ながら事例をあげ、乳幼児の事故やSlDS(乳幼児突然死症候群)などの話を「こんな時はどうしたらいい?」と保育士さんに問いかけ、現場の意見を聞きながら、自分達も勉強するつもりで進める。

【その2】

救急時「こんなことをしてはいけない」というNG事例などを寸劇にして参加者にみてもらう。

【その3】

実際に事故が起きたと仮定して、119番通報や心肺蘇生法など実践さながらのシュミレーションを行い、その場で問題点を話し合う。

【その4】

参加者に率直な意見をアンケートに書いてもらい、今後の活動に取り入れる。

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見学レポート

『クルス』はChildren life Saver Sagamiharaの頭文字をとった名称。文字通り子どもの救急のため活動しており、『命』の危機管理を改めて考えさせられた。

 私事になるが、先日、親が北消防署救急隊のお世話になった。激痛で一歩も動けない状態になり、119番をした。程なく男性3名の救急隊員が到着。冷静に状況を把握し、病院に搬送することになった。この時点ではわからなかったが、親は骨折していたらしい。痛がる親を優しく誘導し、分割式の担架に時間をかけてのせてくれた。何度も「痛いよね、頑張って」と励まし、救急車へ。途中、道が悪い箇所では必ず「ごめんね、揺れるよ」と声をかけていたのが印象的だった。 後で知ったが、実はその時の隊員3名がすべて『クルス』のメンバーだったのだ。驚く前にやはりこのような活動をする方々の志の高さを改めて思い知った。

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▲相原保育園での乳幼児心肺蘇生法の講習

▲乳児と等身大の人形での講習