
大型ボルト締結作業の大変さは、作業者にかかる身体的・精神的負担の両面から考えることができます。
まず、大型ボルトやナットは重量が非常に重く、1本あたり数キログラムから場合によっては10kgを超えるものもあります。
そのため、作業員はそれらを持ち運び、正確な位置に保持しながら取り付けを行う必要があり、腕や腰、肩などへの負担が大きく、長時間の作業による疲労が深刻な問題となります。
また、大型ボルトの締結には非常に高いトルクが要求されるため、人間の力だけでは締付けが困難なケースがほとんどです。
このため、油圧式や電動式などの大型トルクレンチを使用しますが、これらの工具自体が重量が重く、操作中に発生する反力(締め付け時に工具が跳ね返る力)も大きいため、反力を安全に支える治具や補助装置を設置する必要があります。
その作業も手間がかかり、作業の効率性を低下させています。
さらに、作業場所が高所や狭い場所であることも大型ボルト締結作業の難しさを高める要因です。
橋梁やプラント、タワー構造物などの現場では十分なスペースがない場合が多く、重くて大型の工具を扱うためには無理な姿勢を強いられやすくなります。
こうした環境では安全確保が特に重要となり、作業者は転落防止策や工具・部品の落下防止策を講じながら、常に細心の注意を払い続けなければなりません。
加えて、大型ボルト締結作業は品質面での厳格な管理が求められます。
構造物の安全性や強度に直結するため、トルク管理は非常に精密に行う必要があり、指定された締付トルクを必ず守りながら、作業中も計測器を用いて精度を確認・記録する義務があります。
このような緊張感の中で作業を進めるため、精神的にも大きな負担となっています。
このように、大型ボルト締結作業は重量物の取り扱い、高トルクの締付け、作業環境の制約、安全管理の徹底、精度維持という多くの困難が重なり、非常に高度な技術と経験、体力、そして強い安全意識が求められる作業となっています。
締結時に高トルクで締め付けられたボルトは長期間の使用によりネジ部が固着していたり、腐食や焼き付きが起きていたりすることがあり、単純な逆回転操作では緩まないこともあります。
また、ボルト径が大きくなると、ねじ山の面積が広くなり、それに伴い摩擦抵抗やバネ性(弾性力)も大きくなります。
締結時の応力が解放される際に「跳ね返り」や「急な緩み」が発生することがあり、作業者に対して反力がかかるリスクも高まります。
そのため、作業には反力受けの設置や、作業姿勢の確保、安全装備の着用などが不可欠となります。
さらに、現場によっては大型ボルトが高所や狭所、熱を帯びた環境に取り付けられていることもあり、緩め作業には高度な技術と経験が求められます。
ボルトが複数並列で設置されている場合、緩める順序にも配慮が必要で、構造物の応力バランスを崩さないよう慎重に作業を進める必要があります。
こうした理由から、大型ボルトの緩め作業では、単に力任せに工具を使うのではなく、ボルトの状態を見極める判断力や適切な道具の選定、作業手順の管理が求められるのです。最近では、作業の効率化と安全性向上のために電動トルクツールやボルトヒーター(加熱による膨張・収縮を利用)なども活用されるようになっています。
安全にボルト締結作業の効率化をおこなう方法は以下記事で解説しています。
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